バイク車検では、マフラーの音量が基準を超えると不合格になることがあります。
この記事では、年式ごとの音量基準や測定方法、社外マフラーの注意点、そして車検に通すための静音対策まで詳しく解説します。
音量を抑えて安全・快適に走るためのコツをチェックしましょう。
バイク車検でマフラー音量がチェックされる理由

バイク車検では、マフラー音量も確認項目のひとつです。
バイクの排気音が大きすぎると、歩行者が驚いたり、住宅街でトラブルの原因になったりすることがあります。
そのため、道路交通法や騒音規制に基づき、明確な音量基準が設定されています。
近年は規制が強化されており、2010年前後から社外マフラーでも基準証明が求められるようになりました。
車検で音量が測定されるのは、こうした背景により、適切な状態で走行できるか確認するためです。
参考:自動車等のマフラー(消音器)に対する騒音対策の強化について|国土交通省
バイク車検に通るマフラーとは?音量の基準など

バイクの車検では、マフラーの音量が基準値に収まっているかどうかが重要なポイントになります。
純正品だけでなく社外マフラーの場合も対象となり、基準を超えていると車検に通りません。
ここでは、バイク車検に通るマフラーの基準について解説します。
年式ごとに異なる騒音基準値
バイクのマフラー音量には年式ごとに異なる基準が設けられています。
同じ排気量でも製造年によって基準値が変わるため、確認せずに判断すると車検に通らないことがあります。
ここでは、年式ごとに異なる騒音基準値を詳しく解説します。
1985年以前の車両の基準音量
1985年以前に製造されたバイクには、現在のような明確な音量基準がありません。
そのため「旧車は音が大きくても車検に通る」というイメージがあります。
ただし、まったく制限がなかったわけではなく、1971年以降の車両には定常走行騒音74dBと加速走行騒音86dBが設定されていました。
現在の94dB以下(2001年以降の基準)と比較すると、当時の規制は緩やかだったといえます。
ただし、旧車でも極端に大きな音や消音器の欠損があれば不適合の判断を受ける可能性はあります。
2001年以降・2014年以降の基準値の違い
2001年以降に製造されたバイクは、それまでより静かな走行が求められるようになりました。
とくに排気量が251cc以上のモデルでは、次の基準が適用されます。
- 定常騒音:72dB(一定速度で走っているときの音量)
- 加速騒音:73dB(加速するときの音量)
- 近接排気騒音:94dB(マフラー出口付近で測定する音量)
この近接排気騒音が、現在の車検で最も重視される基準です。
さらに2014年4月以降に製造されたバイクは、車種ごとに設定された基準値に+5dBまでの誤差が認められる方式に変わりました。
これは、マフラー内部の消音材が経年劣化で少し音が大きくなることを考慮したものです。
年式によって基準が変わるため、車検前に自分のバイクがどの基準で測定されるのか確認しておくと安心です。
マフラーを取り付ける位置・角度
マフラーは音量だけでなく、取り付け位置や角度も車検で確認されます。
基準に合わない位置に装着されている場合、安全面に問題があると判断され、不適合となる場合があります。
特に1999年1月以降に製造されたバイクでは、最低地上高9cm以上を確保していることが条件です。
地面に近すぎると段差や縁石に接触しやすく、破損や事故につながる可能性があるためです。
また、フロアラインから10mm以上はみ出さないこともルールとして定められています。
この基準は、バック時や駐車中の接触トラブルを防ぐ目的があります。
社外マフラーやアップタイプのマフラーに交換している場合は、角度や突出量が変わりやすいため注意が必要です。
さらに、車高調整を行っているバイクは、サスペンション位置の変化によってマフラーの位置も変わることがあります。
車検前には実測し、基準を満たしているか確認しておくと安心です。
マフラーの劣化の状態
マフラーは基準を満たした製品であっても、状態が悪いと車検に通りません。
サビや腐食が進むと、排気漏れが発生し音量が基準を超えることがあるためです。
とくに融雪剤が撒かれた道路や海沿いの環境では劣化が早まり、穴あきや変色が見られるケースもあります。
また、路面との接触や転倒によるへこみも不具合の原因となります。
さらに、純正マフラーでも刻印が消えていると証明にならない場合があるため要注意です。
白煙が出たり、異臭がある場合は内部の消音材が劣化しているサインです。
車検前に点検し、必要であれば交換やメンテナンスを行いましょう。
社外マフラーは証明書が必須
社外マフラーを取り付けている場合、車検では証明書の提示が必要です。
音量や排気ガスが基準に適合していることを示す書類として「ガスレポ(自動車排出ガス試験結果証明書)」が用意されており、これがないと基準を満たしていても車検に通らない可能性があります。
とくに2016年10月以降の車両は厳格化され、認証マークの確認も必須です。
代表的な認証表示は次のとおりです。
- JMCAマーク(全国二輪用品連合会の認証)
- Eマーク(欧州規格をクリアした証明)
- 自マーク(国内メーカー純正品の証明)
純正マフラーには基準適合が前提のため証明書は不要ですが、社外マフラーは管理が重要です。
紛失した場合は、メーカーへ再発行を依頼できます。
車検前に書類の有無を確認し、保管しておくと安心です。
バイクのマフラー音量の測定方法
バイクの車検では、マフラーの音量が基準内かどうかを専用の方法で測定します。
測定のやり方は決められており、感覚や印象ではなく数値で判断されます。
ここでは、車検で使われる代表的な測定方法を2つ紹介します。
- 近接排気騒音測定
- 加速走行騒音測定
近接排気騒音測定
近接排気騒音測定は、現在の車検で最も一般的に使われる方法です。
走行音ではなく、マフラーから排出される音を基準に判断するため、測定位置や条件が細かく決められています。
測定する位置は排気口から50cm・排気方向に対して45度で、排気口と同じ高さにします。
また、エンジン回転数も規定されています。
- 最高出力回転数が5,000rpmを超える場合 → 最高出力時の50%
- それ以外のバイク → 最高出力時の75%
近接排気騒音測定は数値が明確に出るため、感覚では判断しにくい排気音を客観的に確認できます。
車検前に同条件で測定しておくと、当日の不合格リスクを減らせます。
加速走行騒音測定
加速走行騒音測定は、走行中の排気音を基準として確認する方法です。
静止状態ではなく、実際に加速したときの音を測るため、より実走行に近いデータになります。
主にメーカーが新型バイクを販売する際の認定試験で使用されます。
測定条件は次のように決められています。
- 測定場所: テストコース
- 計測方法: 一定速度からアクセルを開けて走行し、その通過音を測定
- マイク位置: 走行ラインと直角方向に7.5m離した地点
この測定方法は、バイクの音量規制の基準を決める際の指標にもなっています。
バイクのマフラー音量が車検に通らない場合の対処法

バイクの音量が基準を超えてしまった場合でも、いくつかの方法で調整すれば車検に通る可能性があります。
音量がわずかに大きいケースから、マフラー自体の見直しが必要なケースまで対処法はさまざまです。
ここでは、代表的な対処法を3つ紹介します。
- バッフルを装着する
- JMCA認定マフラーに交換する
- 改造車として構造変更申請をする
バッフルを装着する
バッフルは、マフラー内部に取り付けて排気音を抑えるためのパーツです。
音量が基準より大きいときの対処法として手軽に取り入れやすく、多くのバイクで活用されています。
ただし、2010年4月以降に製造されたバイクでは、脱着式バッフルが禁止されています。
これは、車検時だけ取り付けて合格後に外すといった使われ方が多かったことが理由です。
溶接やリベットで固定され、簡単に外せない状態であれば問題ありません。
車検前に音量が気になる場合は、バッフルの装着を検討してみてはいかがでしょうか。
JMCA認定マフラーに交換する
車検にきちんと対応したい場合は、JMCA認定マフラーへ交換する方法がもっとも安心です。
JMCAは「全国二輪車用品連合会」が定める基準で、国の基準より細かくチェックされているのが特徴です。
認定製品にはJMCAプレートがついており、「基準をクリアした安心できるマフラー」として扱われます。
社外マフラーの中には車検対応と表示されていても、車両の状態や測定条件によって基準を超えてしまうことがあります。
その点、JMCA認定モデルなら基準をクリアしたうえで製造されているため、検査で不合格になるリスクが低くなります。
音量を抑えつつカスタムを楽しみたい人や、手間をかけず確実に車検を通したい人におすすめの方法です。
改造車として構造変更申請をする
改造したマフラーで車検に通したい場合は、構造変更申請を行う方法もあります。
構造変更とは、排気系や排気量、外寸など車両の仕様が変わった際に正式に登録内容を変更する手続きです。
この申請が認められると、通常では車検に通らない改造内容でも、公道で合法的に走行できるようになります。
たとえば、ボアアップで排気量が変わった車両やマフラー形状を大きく変更した車両などが対象になります。
ただし、手続きには注意点があります。
- 過度な改造は認められない場合がある
- 申請した時点で車検がリセットされ、再車検が必要
- 任意保険が高くなるケースがある
- 車両の査定額が下がる可能性がある
このようにメリットだけでなく手間やコストも発生するため、必要性を考えたうえで選びましょう。
バイクのマフラー音量で騒音規制に違反した場合の罰則

車検に通らないマフラーで公道を走行すると、罰則を受ける可能性があります。
ここでは違反内容と罰金・減点について解説します。
- 音量基準超過で適用される整備不良違反
- 消音器の欠損・改造による消音器不備違反
- 空ぶかしなどが対象の騒音運転違反
- 違法マフラー装着で問われる不正改造違反
音量基準超過で適用される整備不良違反
バイクの排気音が基準値を超えている場合、そのまま公道を走行すると整備不良車両として扱われます。
道路交通法第62条では、周囲に迷惑や危険を及ぼす可能性のある状態で走行することが禁止されています。
基準を超えた排気音もこれに該当し、取り締まり対象となります。
罰則内容は次のとおりです。
- 懲役:3か月以下 または罰金:5万円以下
- 違反点数:2点
- 反則金:7,000円(二輪)、6,000円(原付)
整備不良違反は一時的な不具合ではなく、「改善の意思がない状態」と判断されやすい点も注意が必要です。
排気音が大きいと感じた場合や、マフラーを交換した際は、基準内かどうか早めに確認しておくと安心です。
消音器の欠損・改造による消音器不備違反
消音機能が損なわれたマフラーで走行した場合は、消音器不備違反に該当します。
これは音量基準超過とは別の扱いで、「消音装置として機能していない状態」そのものが違反対象です。
芯抜き加工や切断、開口部の追加など、見た目で判断されるケースも多いため注意しましょう。
代表的な対象例は次のとおりです。
- 消音器を外している
- 消音器を切断している
- 仕組みを除去し機能を失わせている
罰則は以下の内容が適用されます。
- 違反点数:2点
- 反則金:6,000円(二輪)/5,000円(原付)
- 刑事罰:5万円以下の罰金
加工内容が軽い場合でも違反と判断されることがあるため、マフラーの改造は慎重に行うことが大切です。
空ぶかしなどが対象の騒音運転違反
空ぶかしや不要な急加速などで大きな騒音を出した場合は、騒音運転違反として処理されます。
音量基準に適合しているマフラーでも、走行中や停車中に意図的に大きな音を出す行為は違反となるため注意が必要です。
とくに住宅街や夜間の空ぶかしは周囲への迷惑につながり、取り締まり対象になりやすいケースです。
適用される罰則は次のとおりです。
- 違反点数:2点
- 反則金:6,000円(二輪)/5,000円(原付)
- 刑事罰:5万円以下の罰金
マフラーを交換していなくても、操作しだいで違反になる点が特徴です。
周囲の環境に配慮し、必要以上にエンジン回転数を上げない走り方を意識しましょう。
違法マフラー装着で問われる不正改造違反
違法なマフラーを装着して走行した場合は、不正改造違反として扱われます。
この違反は、車検に通らない仕様のまま公道を走る行為そのものが対象で、音量超過や構造変更の未手続きが含まれます。
保安基準に適合しない状態で走行すると、安全性の低下や周囲への迷惑につながるため、法律でも厳しく規制されています。
適用される罰則は次のとおりです。
- 懲役:6か月以下
- 罰金:30万円以下
マフラー交換自体は違反ではありませんが、基準を満たしていない製品や、刻印や認証のないマフラーを使用すると不正改造と判断されます。
カスタムを楽しむ際は、基準を確認しながら適切なパーツを選びましょう。
バイク車検におけるマフラー音量に関するよくある質問
最後に、バイク車検におけるマフラー音量に関するよくある質問を紹介します。
Q.バッフルを外したら車検に落ちる?
バッフルを外したままでは、車検に通らない可能性が高いです。
バッフルは排気音を抑えるためのパーツで、外すと音量が基準値を超える場合があります。
また、2010年以降は工具なしで外せるバッフル(脱着式)での車検通過が禁止されています。
対策として、溶接やリベットで固定し、簡単に外せない状態であれば使用が認められる場合があります。
車検前は音量と固定方法の両方を確認しておくと安心です。
Q.純正マフラーでも車検に落ちることはある?
純正マフラーであっても、状態によっては車検に落ちる可能性があります。
純正品は基準を満たした状態で販売されていますが、長く使うことで内部の消音材が劣化し音量が大きくなるケースがあります。
また、サビや腐食による排気漏れ、転倒や段差での接触による変形や穴あきがある場合も不合格となることがあります。
さらに、純正マフラーでも刻印が読み取れない状態だと証明として扱われず、社外品と判断される場合がある点も注意ポイントです。
純正だから安心と思わず、日頃から点検しておくことが大切です。
Q.旧車は音量が大きくても問題ない?
1985年以前の旧車は、現行の騒音規制が適用されないため、音量に明確な基準がありません。
しかし、だからといってどんな音でも許容されるわけではなく、極端に大きい排気音は検査官の判断で指摘される場合があります。
とくに消音器が欠損している状態や、明らかに周囲へ配慮が欠ける音量は注意が必要です。
旧車であっても、常識的な範囲に収めておけば車検でトラブルになる可能性は低くなります。
まとめ|バイク車検のマフラー音量は基準を守ろう
バイクのマフラー音量は、車検に通すためだけでなく周囲への配慮という点でも基準を守ることが大切です。
年式やマフラーの種類によって判断基準が変わるため、自分の車両に合う基準を知っておくと安心です。
音量がオーバーしてしまう場合でも、改善方法はいくつかあります。
安全性と快適な走行のためにも、適切なメンテナンスと基準に沿ったカスタムを心がけましょう。
